振付家 白髭 真二さんインタビュー!
Q. 振り付けを依頼されたときの印象は?
A.初めてオファーをいただいた時は、正直なところ「よさこい」=「祭りの踊り」という、盆踊りの発展型のような認識で、普段、私が携わっている舞台上で芸術性やエンターテイメント性を追求する踊りとは、全く別世界のものだと思っていました。しかし、代表の田中さんから過去の高松よさこい連の演目や、本場高知のよさこい祭りの動画を見せていただくうちに、その認識がいかに浅はかであったかを知りました。
先ず、よさこいに出場するチームは何百とありながら、一つ一つのチームが音楽からして完全オリジナルの作品を持っていることに驚かされました。更にその各チームには踊りで表現したい独自のテーマやメッセージがあり、衣装、振付、踊りのクオリティなど、あらゆる面で「伝統的な祭りの踊り」という概念を超えたものを追求をしていることに感銘を受けました。伝統を守りながらも、常に新しい表現に挑戦している姿勢は、私が舞台で目指しているものと共通すると感じました。
よさこいは、決して別世界のものではなく、むしろ桁違いに大きなダンスの祭典だという認識に変わりました。そして、「自分もぜひ挑戦してみたい!」と思いました。
Q. 振り付けでよさこいにコンテンポラリーダンスを融合するために意識したことはありますか?
A. よさこいについては、あえて「素人」の視点を持ち続けることを意識しました。
最初から融合を意識したわけではなく、よさこいという前提も一旦置いておき、純粋に「自分ならどう踊り、表現するか?」を考え、それをまず高松よさこい連のリーダー達に提示しました。提示する際も、極力「振付家」という立場に固執せず、「自分はよさこいに関しては素人なのだ」という姿勢を大切にし、踊り手たちの意見をしっかりと受け止めることを意識しました。その結果、コンテンポラリーダンスとよさこいの要素が自然に融合した表現が生まれたと思っています。
Q. 実際によさこい祭りに参加されてみていかがでしたか?
A. 実は、初めて参加した本場高知でのよさこい祭りでは、最初の演舞でバテてしまったり、普段プロダンサーを名乗っているにも関わらずメダルを一つも貰えなかったりと、散々といえば散々な結果でした。しかし、祭りが終わる頃には、暑さも、ゴール地点まで踊り続けなければならない苦しさも、不思議と笑えてきて、楽しすぎて心が嬉し泣きしていました。沿道からの温かい声援、一緒に踊る仲間たちの笑顔、そして高知の街全体が一体となる熱気。それら全てが、自分の心を解き放ってくれたのだと思います。
高知の街中をひたすら踊り歩く中で、色々な気付きがありました。好きで始めたダンスが、いつの間にか「上手く踊らなければならない」「正しく踊らなければならない」「ダンサーたるものこうでなくてはいけない」といった固定観念に縛られていたことに気付かされたのです。踊りは本来、自由で、楽しくて、楽しむからこそ魂が磨かれる。そんな、踊りに対する尊い感謝の気持ちが湧き上がってきました。そして、技術や評価を超えた、踊ることの本質的な喜びを改めて教えてくれたよさこい祭りに、心から感謝しています。
Q. 今年の高よさでの演舞を考えている人や今年の高よさ演舞を観に来てくれる方に向けて一言メッセージをお願いいたします。
A. 普段ダンス講師をしている私からは、ダンススタジオなどに通って「もっと上手くなりたい!」と熱心に練習されている方にこそ、ぜひ一度、よさこいを体験していただきたいと思っています。ストイックにレッスンに励むことももちろん大切ですが、時には青空の下、成功も失敗も温かく受け止めてもらえる場所で、くたくたになるまで踊り明かす経験は、結果的に自分の目指す踊りへの大きな近道になるはずです。技術だけでなく、踊ることの根源的な喜び、仲間との一体感、そして観客の皆さんとのエネルギーの交換。よさこいには、ダンスの真髄が詰まっています。ぜひ、一緒に踊りましょう!
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プロフィール:白髭真二 (Shinji Shirahige)
コンテンポラリーダンス講師
大学中退を機にダンスの道へ進む。小劇場から帝国劇場、新国立劇場など、あらゆる規模の劇場でのダンス、ミュージカル、演劇公演に出演。さらに、NHK紅白歌合戦含む歌謡ショウのバックダンサー、Mr. ChildrenなどアーティストのPV、東京モーターショー等々、幅広いフィールドで踊るプロダンサーに。現在は恵まれた長身の体型を持ちながらも、それを使いこなせず苦悩し続けた自身の経験から、「全身を繋げ、ダイナミックに動く」をテーマに講師(年間延べ受講者数1200人以上)・振付家として活動中。